読書と読書会

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【読書】レイ・ブラッドベリ『華氏451度』(100分de名著・6月度テキスト)

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▼本を持つことが禁じられ、本が燃やされる近未来を描いたディストピア小説レイ・ブラッドベリのこの作品が描いているものは、「近未来」などではなく、既に現実のものとなってしまっている、高度大衆消費社会に対しての警鐘と思われます。

 

▼標題の「華氏451度」とは、紙が発火する温度のことです。つまりは、意図的に本を燃やす者たちがいるということです。

 

▼なぜ本が燃やされるのか。実は、本=危険思想を明示的に弾圧するということではありません。むしろ、そうした権力の中枢は見えてこない。ここは、同じディストピア小説である『1984年』(ジョージ・オーウェル)と異なるところです。

 

オーウェルにおいては、「ビッグ・ブラザー」という管理の中枢がありました。しかし、この『華氏451度』において、主人公のモンターグという「昇火士(ファイアマン)」(=本を燃やす役職)が相対するのは、刺激を求め続けた結果、立ち止まって考えることを「自主的」に放棄してしまった社会そのものです。

 

▼この、社会から「考える」ことがこぼれ落ちていく様は、とても1950年代に書かれた作品とは思えない、恐ろしいほどの「既視感」で迫ってきます。

 

▼以下、「読書メーター」に記載した内容です。ブログはもっと詳述できると思っていたのですが、力尽きました・・・。

 

本の所持を認めず、見つかり次第「昇火士」による焚書が行われるようになった近未来のアメリカを描く。近未来を描いたディストピア小説である『1984年』と違うのは、ビッグブラザーのような集権的な管理者・権力者が見えないことだろうか。主人公のモンターグを追い詰めていたのは、そうしたわかりやすい敵ではなくて、確立されてしまった、高度大衆消費社会そのものであった。ところどころに挿入される特異なリズムを刻む文体が、緊張感を高めている。ここで鳴らされている警鐘は、時遅しとも取れるが、そうであってはならない。